新しい風

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新しい風を呼んだ。南の国の嵐の中から生まれて、ここまでたどり着いた。暖かな風は北半球の冷えた風と交わり、冷たい風になっていた。私の懐に入れてやると、すやすやと幼い顔で眠った。

暖かくなって元気を取り戻した風に名前をつけた。名前で呼ぶと気に入ったのか、つむじ風になって、砂を巻き上げた。一緒に陽だまりになった縁側で、日向ぼっこをしていると、故郷の南の国が恋しくなったらしく、メッセージボトルに入れて、南下する潮流に浮かべて見送った。窮屈そうなボトルの中で雲を発生させて、雨を降らしながら、別れを惜しんだ。

風の便りで、新しい風は無事、嵐の中で勢いよく風になり、いろいろな姿を見せながら、地球上の循環をダイナミックに駆けずり回っているそうだ。